アース、グランド、接地と言葉は色々ありますが、どれもあいまいな気がします。ここでは大地に直接接続することを、アース(大地への接地)、大地に接続しない信号の基準点を 信号グランド(信号基準点)と( )を付けて言うことにします。
以前、20mのアンテナを設置していました。アンテナの一端は、アース(大地への接地)との間に数mmの短ギャップを設けていました。黒い雲が近づくと、まだ雷鳴は聞こえていないときでも、短ギャップに放電の火花がとび続けます。大地に放電電流が流れていることになります。かなりの高電圧が発生していることになり小さな落雷です。
雷鳴と同時に、近くにあったパソコンで火花が飛びました。分解するとLANボードのコンデンサがパンクしていました。原因は明確にはなっていませんが、電力会社の配電網と同軸ケーブルの間に、落雷による電位差が生じ一番弱いコンデンサがパンクしたと推測しています。同軸ケーブルの先の仕組みは不明のままですが、光ファイバーのネットワークに変更したので、同様の問題は起こっていません。
前述した体験の影響が大きいと思いますが雷の事が気になります。黒い雲が近づくと大気は地表近くまで地表面と対になり、かなりの電荷を蓄積していると思います。電力会社やNTTの架空線を通して放電、すなわち電流が発生していると考えられます(1)(2)。落雷に至らなくても地表面にはかなりの電流が流れ電位勾配ができているのではないでしょうか。具体的なデータは持っていません。
インバーターなどパルスや高周波を扱う機器では、大地に対する浮遊容量を通して漏れ電流が発生します。容量の大きなインバーターを使用する工場等では10mA程度の漏れ電流はあちらこちらで発生しているでしょう。家庭用のエアコンなどでは、漏れ電流はそこまで大きくは無いでしょうが、数が集まれば無視できません。
先日、電力会社の4年毎の定期点検がありました。我が家は住宅地にある一般的な一戸建ですが漏れ電流は0.7mAでした。電柱のアース(大地への接地)ポイントに向い大地を伝い、我が家から0.7mA流れていることになります。
家庭用のAC100Vのコンセントでかなりのサージやノイズが観測されているという報告はよく見ます(3)。サージやノイズが乗っているということは、発生源ではパルスや高周波が発生しているということです。それらの機器では対地の浮遊容量を通して大地に漏れ電流がながれます。ACコンセントにサージ、ノイズが乗っているということは、それに相応した漏れ電流が大地に対して発生しているとも言えます。
感電事故を防ぐという意味では大地の電位は安定していると言えると思います。ただ、真空管フォノイコライザーの残留ノイズは入力側では数μVです。この1/100とすると数10nVのレベルになります。データを持っていないので具体的には言えませんが、10nVに対してどうかという検討が必要だと思います。
AC100Vコンセントは、多分ノイズ源になると思われます。ただ、電源トランスで絶縁できます。もちろんノイズの侵入を完全には防げませんが、効果はあると思います。信号グランド(信号基準点)を3Pコンセントのアース(大地への接地)に繋ぐとノイズの侵入が心配です。一般的な2Pのコンセントも片側は電力会社の柱上トランスでアース(大地への接地)されています。様々なノイズが配電線を通して大地にな流れていると思います。
我が家のオーディオシステムは、AC100Vコンセントからは電源トランスで絶縁し、信号グランド(信号基準点)は電位としては浮いている形で使用しています。
大きなシステムでは絶縁するのも大変なことだと思いますが、我が家のオーディオシステムは絶縁していきたいと思います。
RCAケーブルをアンプの接続に使用すると、LchとRchのシールド網線がアースループを作ります。ほとんどのアンプはこのように接続されていると思います。製作記事も同じようになっているようです。
RCAケーブルのシールド網線の結線について調べて見ました。百瀬了介氏は、プリアンプの電源をパワーアンプと共用しているという前提ですが、プリアンプ側のシールド網線はケースに接続せずパワーアンプ側のみで接続し双方の信号グランド(信号基準点)を1本の線で繋ぐように述べています(4)。上杉佳郎氏は、アンプ内部で使用するシールド線は片側のみケースに接続するように述べていますがアンプ間のケーブルは入出力ともにケースに接続しているようです(5)。
上の図のように、機器の出力側ではシールド網線を接続せずに、信号グランド(信号基準点)を別のケーブルで接続するという方法や、機器の出力側でLch、Rchどちらかのシールド網線を接続しないという方法でアースループは解消します。ただ、RCAケーブルの利便性がなくなります。購入している製品は改造することになります。なかなか踏み切れません。
我が家のフォノイコライザーは、2台のレコードプレーヤーと2台のフォノイコライザーを切り替えるセレクターと接続されています。RCAケーブルの網線は一般的な接続で下の図のようにアースループができています。ただ、通常の音量では、ノイズはスピーカーに耳を近づけるとかすかに聞こえる程度で問題は感じていません。
実験的にRchのケーブルを1mから2mに伸ばして直径30cm程度のループをつくりました。フォノイコライザーの入力ですので盛大にノイズを拾いました。ただ、これはアースループではなく、高インピーダンスのRchの信号線のループでノイズを拾ったと思います。RCAケーブルを短くする必要性を改めて実感しました。
5mの電線を下の図のように接続し大きなアースループを作りました。ノイズに変化はありませんでした。我が家の環境では、この程度のアースループでは影響がないことが解りました。この実験では信号ラインは変えておらず信号線の長さは1mです。ノイズとして入力されるのは、1mの信号線部分の両端の電圧ですので、アースループが大きくても影響を受ける信号線部分が短いと影響は小さくなると考えられます。
スタジオなどで使用する機器にはグランドリフトスイッチが備えられ、グランドリフト機能を有効にすると、アースループが切れる仕組みがあります。対象となるエリアが広く多くの機器が接続されるスタジオや舞台ではアースループに困っているのでしょう。
アースループを切って他の機器との関係を絶つという方法は、複数のフォノイコライザーやコントロールアンプを切り替えて使用するような場合に有効だと思います。
上の図のようにコントロールアンプとパワーアンプをトランスによる平衡伝送路で繋ぐと、グランドリフト機能を実現できます。電源トランスでAC100Vコンセントからも絶縁すると、周囲から隔離された静かなコントロールアンプが実現できるように思います。
アースについて書き始めましたが、絶縁という結論になりました。プロ用機器には、取り入れたい機能が色々ありますが、グランドリフト機能もそのひとつになりました。平衡伝送路の良さも改めて感じました。