ESS-6A裏面下部のStaxのロゴのある白い箱がバイアス電源ユニットで、右にある黒い箱がネットワークです。下部の木製の蓋を外すとバイアス電源ユニットの全容が現れます。4kV程度の高電圧が発生しています。電源を切っても高電圧がコンデンサに蓄積されており感電すると、かなり危険です。蓋は開かない方が賢明です。
基板表面に高電圧発生回路のダイオードが見えます。コンデンサとトランスは、パラフィンで固められています。
高電圧発生回路の基板とトランスをパラフィンから掘り出します。基板に接続されている電線を記録して切断します。トランスはネジで固定されているのでナットに向かって掘り進みます。パラフィンはそれほど固くないので、マイナスドライバーを使います。ナットが見えたらラジオペンチでつかんで、ドライバーでネジを緩めます。ネジ溝にパラフィンが詰まって固くなっています。ネジが取れたら、トランスの周りから掘り進めます。ある程度パラフィンを除去できたらケースをドライヤーで温めます。パラフィンが柔らかくなったところで、トランスを引き抜きます。トランスと基板が取り出されました。
2台目は、トランスの取り付けネジを外したあと、ケースを温めて思い切ってトランスを引っ張ると、トランスと基板がごっそり外れました。2台分のパラフィンは、どんぶり2杯分になりました。
パラフィンから掘り出した基板とトランスから回路図を作成します。分解結果を詳細に記述されているブログが大変参考になりました(2)(3)。バイアス電源ユニットの回路は次の図ようになります。コンデンサとダイオードで構成された梯子状の部分がコッククロフト・ウォルトン回路で図に示した回路の場合4倍の電圧が発生します。トランスの1次巻き線が117Vで二次巻き線が750Vなので、1つ目のコンデンサの充電電圧は、
750 x 100/117 x √2 = 904 (V)
となります。ウーファーには、4倍の3616Vが、ツイーター、スコーカーには、2倍の1808Vが印加されます。
高電圧を発生するコッククロフト・ウォルトン回路のダイオードとコンデンサは狭いスペースに押し込まれています。高電圧が印加されるところなので、同じように押し込めることは、今後のメンテナンスを考えると避けたいと思います。
高電圧発生回路の収納ケースを用意し、広い場所に収めることにします。アルミシャーシを加工したケースをオリジナルのバイアス電源ユニットの下に抱きかかえる構造としました。交換用部品は次のようになりました。
ラグ板に部品を取り付けます。不要な端子は取り除き絶縁距離を確保します。
基板からパイロットランプ用の100Ωの抵抗以外の高電圧発生回路の部品を取り除きます。基板はトランスの中継端子として使用します。基板とトランスを元にもどします。パラフィンの充填は試運転の後にします。
新規に製作した高電圧発生回路のラグ板をオリジナルのバイアス電源ユニットの下に設けたケースに納めます。このケースの底面にはベークライトの板を敷いて絶縁距離を確保しています。ラグ板の取り付けはプラスチックねじを使っています。
バイアス電源ユニットを本体に取り付け、配線を元通りに戻します.
オリジナルの接続ケーブルは、長い4芯ケーブルで、そのうち2本をAC100Vの供給に、2本をオーディオ信号に使用しています。ACコンセントもメインアンプもスピーカーの近くにあり、このケーブルは大変使いにくいので、オーディオ信号は専用の端子を別に設けます。ただ、ネットワークユニットから出ている4本の信号線がコネクタの中で接続されています。ネットワークユニットは分解していませんので回路は不明ですが、この線を繋ぎ変えるとインピーダンスの変更ができるようです。コネクタ内部の接続の通りに配線します。
オーディオ信号の端子には、線押さえ付のねじ式端子台を使用します。一般的なスピーカー端子に比べドライバーが必要になりますが、使いやすく信頼性も高いと思います。ネットワークユニットの横にとりつけます。
ESS-6Aには電源スイッチがないので不便です。スイッチボックスを作り左スピーカーの底に取り付けました。パイロットランプをつけサービスコンセントで右スピーカーの電源も供給できます。オリジナルのケーブルは短くして電源コードとして使用します。大変すっきりと接続できるようになりました。
ウーファーが復活しました。高電圧発生回路をリニューアルしただけですが、50年前の音が蘇ったように感じます。穏やかな、それでいて輪郭の明瞭な音です。自然な音なのでしょうか、時間を忘れて聴き続けてしまいます。
しばらく様子を見てから、パラフィンの再充填を行いたいと思います。高電圧発生回路以外にネットワークユニットや発音ユニットもパラフィンで固められています。パラフィンで固めると、振動の抑制、機械的な補強、湿気の防止、絶縁の補強などいいことが色々ありそうです。いざとなれば除去することも割と簡単にできます。アンプなどにも応用してみたいと思います。